Japanische Klassiker mit Furigana
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なつくさせんき
夏草戦記
山本 周五郎
Lesen Sie 夏草戦記 (なつくさせんき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.107 Zeichen · 41 Bildschirme
……」
陸前までの道は遠く、ましてこの騒ぎのなかを娘ひとりの旅は無謀というよりほかにない、兵たちといっしょなら大丈夫と考えた気持は尤もであるし、身の上の哀れさはつよく部将の心をうごかした。けれどもこちらの事情はもっときびしく、危険はさらに大きい、到底むすめの足などでついてゆける道次ではないのである。
「そのときの隊士の名は知っておるのか」
「はい、……三瀬新九郎さまとうかがいました」
「ああ三瀬か」思い当るとみえて部将はふりかえった、「ちょっと三瀬を呼んで来てくれ」
「あれは此処にはおりません」脇にいた副将が答えた、「相良の尖鋒隊に加わってもう出発いたしました」
そうかと部将は残念そうにうなずいた、娘の初は不安そうにこちらを見あげていた。
「いま聞くとおりだ、その者はもう此処にはいない、尖鋒隊というものに加わってさきへ出発してしまった。またこの人数といっしょにゆきたいとのことだが、われわれは山々谷々の嶮岨な道を突破しなければならぬし、事情は云えぬが絶えず敵につけ覘われている、いつ不意を襲われて合戦になるかも知れないので、とても女の足でついて来られるものではない、新九郎にはおまえが礼に来たことをよく伝えてやるから、夜が明けたら須賀川へでも下りて、しかるべき人をたのんで故郷へ帰るがよい」