Japanische Klassiker mit Furigana
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なつとおきやま
夏遠き山
宮本 百合子
Lesen Sie 夏遠き山 (なつとおきやま) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.736 Zeichen · 8 Bildschirme
という額を献納したのも、当を得たことだ。然し(山の神様笑いながら仰云った。この額はちっと手軽るすぎるね)。
東京から一人新しい連れが加ったりしたので、十六日の快晴を目がけ、塩原まで遠乗りした。緩くり一時間半の行程。皆塩原の風景には好い記憶をもっていたのでわざわざ出かけたのであったが、今度は那須と比較して異った感じを受けた。箒川を見晴らせるところというので清琴楼に一泊した。いい月夜で、川では河鹿が鳴く、山が黒く迫って、瀬の音が淙々と絶えない。燈を消し、月あかりで目前の自然を眺めていると、余り所謂いい景色という型に嵌っていて、素直に心にうけとれない。妙な心持であった。子供の時分、幻燈で白い幕の上に映して見た月夜のどこかの景色、水も山も蒼い光に包まれたところがまるでその朧な思い出のうちにある、幻燈の通りだ。この月夜の景は現実のものか、それとも一つの幻像か。自分が椽近く座っている、その位置の知覚が妙に錯倒する心持がした。金色夜叉の技巧的美文が出来ざるを得ない自然だ。――都会人の観賞し易い傾向の勝景――憎まれ口を云えば、幾らか新派劇的趣味を帯びた美観だ。小太郎ケ淵附近の楓の新緑を透かし輝いていた日光の澄明さ。