Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのちょう
夜の蝶
山本 周五郎
Lesen Sie 夜の蝶 (よるのちょう) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.345 Zeichen · 21 Bildschirme
「高次はどこ?」とその女が云った。「うちの高次が来ているでしょ。どこにいるの」
そこにいる者はみんな顔をあげた。だが、旅装の客は反対に眼をそむけ、頬杖をついて顔を隠すようにした。
女は縞小紋の袷に博多の帯をしめ、素足に男物の雪駄をはいていた。年は二十五、六から三十一、二のあいだであろう、老けているようでもあり若くみえるようでもある。おも長のふっくりした顔だちで、品もいいし、かなり美しい。際立って美しいといってもいいだろう。しかし、その美しさはどことなく非人間的で、能面か仏像のような印象を与える。眉をしかめたり眼まぜをしたり、媚びた嬌めかしい微笑をみせたりするが、それでもなお人間ばなれのした感じは消えなかった。
「ねえ、隠さないで教えてちょうだい」と女は云った。「あたし、あの人に坊やを見せるのよ。あの人はまだ坊やが生れたことを知らないんだもの。ねえ、高次はどこにいるの」
「こっちへいらっしゃい。高次は此処にいますぜ」竹造が云った。「それ見えるでしょう、こっちへ来てごらんなさい」
「からかっちゃあいけねえ」
主人の与平が出ていって、竹造を叱り、女をなだめた。