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Japanische Klassiker mit Furigana

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よるのくつ

夜の靴

横光 利一

Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme

Aozora Bunko

「そう、あの人の娘さんならいい人ですよ。それは良い児だということですわ。」

妻はそう云ってからそのとき、ふと声を落して黙った。自分の子供の、その娘のようには自慢になりそうにもないことを思い出したらしい、悲しげなその様子を見て、急に私はもう話をそれ以上つづける勇気を失った。女の幸不幸の大部分は子供にあることぐらい、もう知りすぎている二人だった。寝てからも、しかし、私は一昨日の結婚談がうまく整ってくれることをひそかに希望した。

罪滅ぼしの気持ちも多分にある。私はついに候補者のだれとも会わずに帰って来たのだが、その日、それから青年たちを混え、男ばかり五人で田川温泉へ行って一泊した。帰りはいつまで待っても自動車が来なかったのでやむなく、炭輸送車の真黒な箱へ乗せてもらったが、炭の中で揺れている花婿を見て、私は、

「ああ、花咲けり。」と思った。私から刻刻過ぎゆくものをこのときほどまだつよく感じたことはない。がたりとメートル器の針の揺れ動くのを見る思いで、黒い輸送車の中の、丁度私の眼の高さにある青年の胸の釦を満開の花弁のように瑞瑞しく眺めていた。

しかし、この炭箱の中で私は負けてばかりもいられなかった。