Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme
」
「その家が実はおかしいことがあった。」
と、私もつい云わずも良いことを思い出し話してしまったことがある。私は外国から帰った直後のこと、何とかしてじかに一度土地というものへの愛情を感じて見たくなり、少し自分で持ってみたいと思ったことがあって、義弟のいる玉川附近を二人で歩き廻ったある日のこと、むかしの神社の跡で八幡山という小高い丘の前へ立った。
「いいな、ここは。」と私は云った。
私はそこを買いたかった。赤松が沢山生えている傾斜地で、手ごろなここの空地は日をよく浴び草も柔かった。
「いいけれども、この赤松で首吊りがあったのですよ。」と義弟は一本の枝ぶりの良い松をさして云った。
ふと文句なく私は不快になった。
「じゃ、駄目だ。」
しかし、惜しい傾斜の中ごろのところで、その一本の赤松だけ不相応に延び下った枝で体を傾け、滑かな肌に日をよく浴びて美しかった。それから一二年の後再びその小丘の前に立ってみると、そこだけ縄張りのしてある中に、東条英機建築敷地という立札が建ててあった。いやな所を買ったものだ、僕さえ止めたところだのにと思っていると、間もなくそのあたりは美しく切り開かれ、眼醒めるばかりの広闊な場所に変っていた。