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Japanische Klassiker mit Furigana

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よるのくつ

夜の靴

横光 利一

Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme

Aozora Bunko

明るい。――しかし、まだ出征している清江の長男は帰って来ない。遠山にもう雪がかかっているのに。

銀杏の実が降って来る。唐芋という里芋と同じ芋は、ここでは泥田の中で作っているが、清江はこれを掘りに朝からもう泥の中へ浸ってがぼがぼ攪き廻している。私は感動より恐怖を覚えた。もうこの婦人は労働マニアになっているのではあるまいか。

私は沼の周囲の路をまた一人で歩いてみる。この路は平坦で人のいたことは一度もない。垂れ下った栗の林に包まれ落葉が積っているので、つい私はここへ来て一人になる。そうすると、いつも定って私の胃には酸が下って来て腹痛になり、木の切株に休みながら沼に密集した菱の実を見降ろしてじっとしている。自然に埋没してしまう自分の頭が堪らない陰鬱さで動かず、振り立てようにもどうともならぬ無感動な気持ちで、湮滅していった西羽黒の堂塔の跡を眺め廻しているだけだ。

人間全体に目的なんてない。――私は突然そんなことを思う。それなら手段もないのだ。生を愉しむべきだと思っても酸が下って来ては死が内部から近づいて来ているようなものである。びいどろ色をした、葛餅色の重なった山脈の頂に日が射していて、そこだけほの明るく神のいたまうような気配すらあるが、私の胃の襞に酸が下って来て停らない。