Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme
おれの身体は、穴だらけで、満足なところは、いったいどこにあるんだろうと思う。まったくだよ。人の非難するところを全部おれは、受け入れる性質だからね。こいつを全部受け入れて見なさい。おれは零以下の人間だ。そのくせ人は、おれにまだ何か書け書けだ。どういうことだろうこれは。どっかに一つ、良いところがなくちゃならんじゃないか。」
私は少し感傷的になったのが、それが悲しかった。
「どっかしら。――ないわね。」と妻は黙っていてから云った。
「いや、一つだけある。」
「どういうとこ?」
「おれは、人に感心する性質だよ。おれは自分が悪いと思えばこそ人に感心するのだ。これが風雅というものさ。芭蕉さんのとは少しばかり違う。僕のはね。」
「芭蕉さんのはどういうの?」
「あの風雅は、まだ花や鳥に慰められている無事なところがあってね。そこが繁栄する理由だよ。芭蕉さん、きっと自分のそこがいやだったんじゃないかなア。あの人は伊賀の柘植の人だから、おれと同じ村だ。それだから、おれにはあの人の心持ちがよく分る。小林秀雄はそこを知ってるもんだから、おれに芭蕉論をやれやれと、奨めるのさ。」
「小林さんが?」