Japanische Klassiker mit Furigana
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よるのくつ
夜の靴
横光 利一
Lesen Sie 夜の靴 (よるのくつ) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 107.056 Zeichen · 213 Bildschirme
ていて、そのまま有耶無耶に捨て去り、またどこかへかき消えていこうとしている現在というもの。なかなか答案は難儀になった。百五十倍の難儀さだが、しかし、まアせいぜい二十倍ぐらいの難儀さとしてすませて置きたい頭の性格。――しかも、事実は百五十倍の複雑さで展開しているという場合に、人人はいったいいかなることを仕様というのだろうか。
とにかく、人が休息したくてたまらぬときに、そこを見込んで働きたくて仕方のないのがいることも事実である。東京からの通信では、米一升が六十円になったという。誰がどこで幾らで売ったか、いつ、どこへ、幾らで買いに来たか、という噂について、日夜耳を聳立てている農民に、こんな東京の話は聞かされたものではない。十円でびっくりしているものらに、六十円の真相を告げては、――それも、ただほんの噂だけで米の値がそれだけ跳ねあがる喜びに、呆然としているときだ。どこでも、人の集りの中では、話はひそひそ話ばかりである。私らの足音がすると、ぴたりと話は停り炉の火ばかりめらめら燃えている。草の中に跼み込み、何か呟きあっている二人ものがあるかと思うと、汚ならしい笑顔で、薄黄色い歯を出して外っ方を向く。