Japanische Klassiker mit Furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme
おい、亀公、お前この俺を一ぺんでもびっくりさせることが出来たら、新円で千円くれてやらア」
蓄膿症をわずらっているらしくしきりに鼻をズーズーさせている亀吉の顔を、豹吉はにこりともせず眺めて、
「――お前ら掏摸のくせに、千円の金を持ったことないやろ」
「持たいでか。それここに……」
亀吉は胸のポケットを押えた。
豹吉はちらと見て、
「なるほど、持ってやがる。まア二千円ってとこかな」
「えッ」
「どや、図星やろ。あはは……。それくらいの眼が利かないで、掏摸がつとまるか。まア、掏られぬように気イつけろ」
豹吉が言うと、お加代もはじめて微笑して、
「亀公にしてはめずらしい大金ね。拾ったの?」
と、冷かすと、亀吉はふっと唇をとがらせて、
「何をぬかす。拾った金なら届けるわい」
「じゃ、掏った金なら持ってるの……」
「そや」
「本当に掏ったの……」
「当りきシャリキ、もちろん……おまけに、掏ったのが紙一枚、それが二千円とはごついやろう」
「また担ぐんじゃない……」
「まア、聴け……」
そして亀吉の喋ったのは、こうだった。
――昨夜、亀吉は大阪駅の東出口の荷物預り所で、脊中の荷物を預けている復員軍人を見た。