Japanische Klassiker mit Furigana
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やこうちゅう
夜光虫
織田 作之助
Lesen Sie 夜光虫 (やこうちゅう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 66.871 Zeichen · 134 Bildschirme
豹吉は悠然と渡辺橋の方へ歩いて行った。
犯罪をおかした現場へ行ってみるというのは、よほど度胸がいる――と、豹吉は思っていたが、実はそれが犯罪をおかした者に共通の一種の恐怖観念からであるのには、気がつかなかった。
もう夜の十時に近かったから、朝と同じように、人通りのすくない橋のたもとに佇んで、豹吉はじっと川を覗きこんでいた。
「あの川の底であの男は死んでしまったのだな」
と、ふと思うと、急にガタガタ足がふるえて来た。
「なんや、ふるえてるぞ」
だらしがないじゃないかと自嘲していると、豹吉は急に持前の、人をあっといわせたいといういつもの癖が頭をもたげてむずむずして来た。
「人を驚かせるが、自分は驚かないのがダンディの第一条件だ」
というおきてを守っている豹吉だった。
だから、一たび、
「何か人をあっといわせるようなことをしてみたい」
と、思うと、もう腹の虫がむずむずして来て、いても立ってもおられなかった。
「どんなことをして、人をあっといわせてやろうかナ」
川を覗きこんでいた顔をきっと上げて、豹吉は豹のような眼を輝かせて、いきなり振りむくと、ペッと唾を吐いた。