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Japanische Klassiker mit Furigana

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よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.172 Zeichen · 206 Bildschirme

Aozora Bunko

がようやく御歳二十二、三のうら若さであることを思って、なんとなく涙が迫った。彼の腰には、宿を出る時にさして来た一本の新しい扇子がある。その扇面には自作の歌一首書きつけてある。それは人に示すためにしるしたものでもなかったが、深い草叢の中にある名もない民の一人でも、この国の前途を憂うる小さなこころざしにかけては、あえて人に劣らないとの思いが寄せてある。東漸するヨーロッパ人の氾濫を自分らの子孫のためにもこのままに放任すべき時ではなかろうとの意味のものである。その歌、

蟹の穴ふせぎとめずは高堤やがてくゆべき時なからめや     半蔵

この扇子を手にして、彼は御通輦を待ち受けた。

さらに三十分ほど待った。もはや町々を警めに来る近衛騎兵の一隊が勇ましい馬蹄の音も聞こえようかというころになった。その鎗先にかざす紅白の小旗を今か今かと待ち受け顔な人々は彼の右にも左にもあった。その時、彼は実に強い衝動に駆られた。手にした粗末な扇子でも、それを献じたいと思うほどのやむにやまれない熱い情が一時に胸にさし迫った。彼は近づいて来る第一の御馬車を御先乗と心得、前後を顧みるいとまもなく群集の中から進み出て、そのお馬車の中に扇子を投進した。