Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

よあけまえ

夜明け前

島崎 藤村

Lesen Sie 夜明け前 (よあけまえ) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.172 Zeichen · 206 Bildschirme

Aozora Bunko

」

と言いながら、お民も客のいるところへ酒をすすめに来た。彼女は客や主人の膳の上にある箸休めの皿をさげて、娘お粂が順に勝手の方から運んで来るものをそのかわりに載せた。遠来の客にもめずらしく思ってもらえそうなものといえば、木曾川の方でとれた「たなびら」ぐらいのもの。それを彼女は魚田にして出した。でも、こんな山家料理がかえって正香をよろこばせる。

「奥さんの前ですが、」と正香は一口飲みかけた盃を膳の上に置いて、「いつぞや、お宅の土蔵のなかに隠していただいた時、青山君が瓢箪に酒を入れて持って来て、わたしに飲ませてくれました。あの時の酒の味はよほど身にしみたと見えて、伊那の方でも思い出し、京都や東京の方に行ってる時も思い出しました。おそらく、わたしは一生あの酒の味を忘れますまい。」

「あれから、十年にもなりますものね。」と半蔵も言った。

お粂がその時、吸い物の向こう付けになるようなものを盆にのせて持って来た。お民はそれを客にすすめながら、

「蕨でございますよ。」

「今時分、蕨とはめずらしい。」正香が言う。

「これは春先の若い蕨を塩漬けにして置いたものですが、塩をもどして、薄味で煮て見ました。