Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆめどのさつじんじけん
夢殿殺人事件
小栗 虫太郎
Lesen Sie 夢殿殺人事件 (ゆめどのさつじんじけん) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.755 Zeichen · 55 Bildschirme
そうすると、扉を出ると同時に笙が鳴り始めたけれども、火焔太鼓の音は聴こえず、その笙も二、三分鳴り続けたのみで、その後は一時十五分に、智凡尼が変事を発見するまで、物音一つしなかったと云うのである。尚、尼僧達の動静に就いて云えば、盤得尼が自室に、普光は書院に、寂連は遙か離れた経蔵に、智凡は本堂の飾り変えをしていたと云うのみの事であって……、更に、事件を境にして夢殿内に起っていた変化と云えば、小窓が開かれていた事と、油時計が一時三十分を指して消えている――と云う二つに過ぎないのだった。
以上の聴取を終ると、法水は再び動き始めた。
「それでは支倉君、床に付いている推摩居士の皮膚の跡を探すとするかな」
所が、その捜査は空しく終ってしまい、真夏の汗ばむ陽盛りに、鏡板の上に付いていなければならぬ筈の、何物をも発見されなかった。が、最後に至って、検事の眼が床の一点に凍り付いてしまった。彼が無言のまま指差した個所を、横合から透して見たとき、法水は、自分の心動を聴いたような心持がした。左手の推摩居士が坐っていた礼盤から始まって、三階へ行く階段の方角へ点々と連なっているのが、中央の塊状を中心に、前方に三つ後方に一つ、それぞれに鏃形をした、四星形の微かな皮紋であって、その形は、疑うべくもない巨鳥の趾跡だった。