Japanische Klassiker mit Furigana
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おおいがわおくやまのはなし
大井川奥山の話
木暮 理太郎
Lesen Sie 大井川奥山の話 (おおいがわおくやまのはなし) von 木暮 理太郎 (こぐれりたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.724 Zeichen · 20 Bildschirme
九時頃雨が止んだが晴れそうな様子はない。小鳥が偃松や白檜の間でチュイーチュイーと鳴いているのが聞える、岳雀であるという。退屈の余り十時半頃、此処から遠くはあるまいと想われる上河内岳へ登る積りで、一人霧を突いて出懸けた。左の少し草原の斜面を登ると、もう天幕の所在は分らなくなる。偃松のすき間を縫って尾根の高みに出た。岩の斜面が上へ上へと霧の中を導いて行く。二、三間毎に岩を引起して道しるべとしながら進んだ。それが案外手間取って、一時間を費してもまだ上河内岳に達しない。遺憾ではあったが霧が深いので引返すことにした。この時引起した岩の下から長さ五寸余りの箱根山椒魚がにょろにょろと這い出たのには驚いた。全体が淡い肉色を呈している。雨畑から小河内へ踰える日に、雨畑川の上流捻切沢で驟雨に襲われ、暫く木蔭に雨宿りをしていると、渓水が少しく増して急に水の中がざわつき出した。不審に思ってよく視るとそれは箱根山椒魚だったのである。何十疋となくもつれ合っていたから、蕃殖期であったかも知れない。土地の人の称呼は山カジカ。薬になるので大人も小供も焼いて食うという。普通千米以上の高所に多いそうであるが、二千七百米に近い高さは、恐らく箱根山椒魚の登った最高記録ではあるまいか。