Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.722 Zeichen · 286 Bildschirme

Aozora Bunko

その日の午後、お雪は花を集めて部屋を飾ろうと思って、近いところの尾根から林の中へ入りました。

無心で花をたずねて、林の中へ進んで行くと、ふと行手でガサリと音がしましたので、ハッと驚きました。もしや、あんまり深入りして、熊にでもでっくわしたのではないか。

とおそれて、その音のした林の奥を見ますと、幸いに熊ではありません。たしかに人間の姿であります。先方では気がつかないが、こちらではよくわかります。林の中を、あちら向きになって、うろうろたどって行くのは、まぎれもない、男妾の浅吉の姿でしたから、お雪は、不安な思いでじっとそれを見送りました。

暫く様子を見ているうちに、お雪がじっとしていられなくなって、顔色を変えて、一散に浅吉のいた方向に向って馳せ出したのは、魂を失うたように、うろうろしていた浅吉が、今しも一本の木の枝を選んで、そこへ紐をかけたのはまさしく縊れて死のうとの覚悟に相違ありません。

あなやと、お雪はかけよって、今しも紐へ両手をかけた浅吉の身体に抱きつきました。

お雪に抱き留められた浅吉は、それを振り解くほどの気力もなく、ぐったりと草の上へ倒れて、さめざめと泣きました。