Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.722 Zeichen · 286 Bildschirme
あちらの畑の中の柿の木の上で声がする。
「新ちゃん、沢井の道場がこのごろ開けたってなあ」
「そうかい」
「それでね、女の先生が来たんだとさ。女の先生だから薙刀でも教えるんだろう」
「そうか知ら、薙刀はこわいや」
お松が通りかかるとも知らず、沢井の道場のこのごろの噂。
「薙刀は一段違いだからな」
「そうさ、薙刀は一段違いだから、油断してかかるとやられるとさ」
「明日あたり見に行こうか」
「見に行こう。だが、先生にしかられると悪いからな」
「見に行くだけならよかろう。それに、薙刀の武甲流というのは、もとは甲源一刀流から出ているのだと先生がいったよ」
「そうか知ら」
「女でも先生になるくらいだから、強いだろうな」
「そりゃ強いさ」
お松は立ちどまって、柿の木の上の子供の話を聞きながら、おかしさに堪えられませんでした。沢井の道場を開いて、剣を教えずして、文字を学ばしめているのに、それが誤り伝えられて、自分のことが薙刀の師範として子供らの噂にのぼっている。それにしてもこのあたりの子供、柿の木によじながらも武芸の話。路傍に置捨てられた剣術の道具も、この子供のそれに違いない。
話によれば、近いところの先生の許へ、剣術の稽古に行くその道草らしい。