Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.722 Zeichen · 286 Bildschirme

Aozora Bunko

神尾主膳はむらむらとした気分を鏡台に投げつけて、それをひっくり返しただけで、すっと自分の居間へ引上げてしまいました。

「なんて、乱暴でしょう」

お絹も、さすがに、むらむらとしましたが、酒が手伝っていない以上は、結局、これだけで納まるものだと見くびりながら、倒れた鏡台を起し、

「いやになっちまう」

と言いながら、鏡台を引起して、ふたたび鏡台に向ったが、「じゃ、止そう、お寺へなんか行くのは止しちまおう、こちらから頼んだわけじゃあるまいし」とは言いません。鏡に向って以前よりは念入りにお化粧をやり直したのは、かえって、「行きますとも……行きますとも。ここまで乗りかけた舟に乗らないでいられるものですか。落ッこちる心配なんかありませんから御安心下さいよ」といっているようです。そうでしょう、落ちる心配はあるまい。落ちたところで、この女は溺れる気づかいのない女です。

そうして丹念にお化粧を済ましたお絹は、根岸の里の夕闇を、さんざめかして程遠からぬ千隆寺へ乗込んだのは間もない時。

神尾主膳が酒を飲み出したのはそのあとのことで、お絹とひきちがいに、下男が近所の酒屋へ飛びました。