Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.722 Zeichen · 286 Bildschirme

Aozora Bunko

六

駒井甚三郎は、房州の洲崎に帰るべく、木更津船に乗込みました。

その昔お角が、清澄の茂太郎を買込みに行く時に乗込んで、大難に遭ったのとおなじ航路で、おなじ性質の乗合船。

なるべく人目に立たないように、駒井は帆柱のうしろ、荷物の隅に隠れていました。

乗合の客は、例のとおなじように、士分階級をのぞいた農工商のものと、今日は、それ以外の遊民が少なからず乗合わせている。

遊民というのは、玄冶店の芝居に出てくるような種類の人。赤間の源左衛門もいれば、切られないの与三もいる。お富を一段上へ行ったようなお角がいないのが物足りない。

しかし、きょうは、天気も申し分なく、近き将来の時間において、思い設けぬ天候の異変もこれあるまじく、たとえ、お角が乗合わせていたからとて、人身御供に上げられる心配もまずありそうなことはなく――そうそうあられてはたまらない――それで江戸湾内を立ち出でる木更津船の形は、広重に描かせて版画にしておきたいほど、のどかなものです。

隠れているといっても、なにしろ限りある木更津船の甲板の上で、書物を開いている駒井甚三郎の耳には、乗合船特有の世間話が、連続して流れ込んで来るのを防ぐことはできない。