Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 145.722 Zeichen · 286 Bildschirme
弁信法師は、地上の虫が咽ぶように咽び出して、
「現在の大難を思うも涙、後生の成仏を思うてよろこぶにも涙こぼるるなり、鳥と虫とは鳴けども涙落ちず、日蓮は泣かねど涙ひまなし……と御遺文のうちから、私が清澄におります時に、朋輩から教えられたのを覚えているのでございます」
といって、あらぬ方に向き直って、いつもするように、誰をあてにともない申しわけ。
「ええ、私でございますか……いつも申し上げる通り、この眼が見えないものでございますから、耳の方が発達しておりまして、一度聞かせていただいたことはわすれません、二三度、とっくりと聞かせていただきますと、生涯わすれないのが、幸か不幸か私にはわかりませぬ……ことに、達人高士のお言葉には、必ず音節とおなじような律がございますものですから、それが音律の好きな私には、ひとりでに、すらすらと覚えられてしまう所以でございます」
弁信は、ふらふらと庭の中を二足ばかりあるいて踏みとどまり、
「日蓮上人は、安房の国、小湊の浜でお生れになりました。こういう山国とちがいまして、あちらは海の国でございます、大洋の波が朝な夕なに岸を打っては吼えているのでございます……小湊へおいでになった方も多いでございましょうが、あの波の音をお聞きになりましたか……今も波の音が南無妙法蓮華経と響いて聞えるのが不思議