Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 159.272 Zeichen · 313 Bildschirme

Aozora Bunko

「お入りなさいな」

お勢さんはまだ立たないで、返事だけをしました。

そこで、障子をあけて、

「御免よ」

といって顔を出した男を見て、力持のお勢さんがハッと驚きました。

「まあ、がんりきの兄さん」

「お勢ちゃんかい」

「なんて、お珍しいんでしょう」

お勢さんは、大きな体を揺ぶって出て来ました。

「すっかり御無沙汰しちゃったね」

がんりきの百蔵は、唐桟の半纏かなにかで、玄冶店の与三もどきに、ちょっと気取って、

「時に、これはどうしたい」

といって親指を出して見せると、

「親方はお留守なんですが、まあお上りくださいましよ」

「留守かい」

「ええ、お留守でございますが、まあお上りなさいまし」

「すぐ、帰るかね」

「いいえ……ちょっと旅へお出かけなすったんですから」

「旅に出たって? おやおや」

がんりきは、やや失望の体で上り口に佇んでいると、お勢さんは、

「兄さん、どうなすったのだろうと、みんなで心配していましたわ」

「なにかえ、親方は旅に出たって、どっちの方へ行ったんだろう」

「箱根から熱海の方へ……」

「洒落てやがらあ」

がんりきは少々興醒め顔をして、

「まあ、仕方がねえや、それじゃお留守にひとつお邪魔をすることにして……」