Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.467 Zeichen · 168 Bildschirme

Aozora Bunko

三十三

コック部屋へ来ると、コック見習をしていた六さんというのが、いきなり言葉をかけて、

「忠さん、今日はお絹様がおいでになりませんでしたね、それでマネージャがたいそうがっかりしていましたね」

「あ、そうでしたねえ」

「マネージャは、今日の実験をお絹さんに見せたかったんだね、そうしてその交易に、お絹さんの顔を見たかったんだよ」

「そうか知ら」

「そうかしらじゃねえね、うちのマネージャときちゃ、すっかりお絹さんに参ってるんだぜ」

コックの六さんが、だんだん小声になって言うから、

「そんなことはあるまい」

「ないどころか、日本の絹は世界一だってね、それと同じことに、マダム・シルクの年増っぷりが、飛びきりの羽二重なんだとさ」

「マダム・シルク?」

その時に、忠作がハッとしました。そうだ、最初に自分が行った時に、今日はマダム・シルクが来るはずだが、来たら早速庭へ通せとマネージャが言った。

実験が済んだ後に、今日は来るべき約束のマダム・シルクが来ていない、残念と言った。

その何であるかは、忠作の頭にその時までピンと来なかったのだ、多分知合いの西洋人の友達だろうぐらいに心得て、お茶を濁した返事でごまかしていたが、今こう言われてみると、ヒシと思い当るのだ。