Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.467 Zeichen · 168 Bildschirme
「不審に候」
家老の松野主馬が答えると、他の一人の家老の稲葉正成が言う、
「大谷刑部も存外、目先の見えぬ愚将じゃわい」
「愚将とは?」
「あれは志を翻して、石田三成を助けに行くのでござる」
「治部少輔へ加勢にか……」
「螳螂の軍に加わるきりぎりすのようなものでござる」
一軍の間に嘲笑が起ろうとする時に、家老の松野主馬がそれを遮った。
「大谷ほどの者がなんで成敗の道を知らぬはずがござろう、あれは石田を助けに行くのではない、三成に首を与えに行くのだ」
「首を与えに」
「あの汚ない首を……」
一軍の間に嘲笑の色が動くのを、松野主馬がまた抑えた。
「事の成るを知りつつ事を共にするは尋常のこと、わが不利を見て相手に節を売るは売女の振舞――成敗を眼中に置かず、意気を方寸に包んで、甘んじて弱きに味方する英雄の心情、それは英雄のみが知るものに相違ない、偉なる哉、刑部少輔――」
嘲笑の色が、この悲壮なる讃美の声で圧倒されてしまった。
小早川金吾中納言秀秋の血気の上に、愴然たる雲がかかる。
家老松野主馬は、それに附け加えて、全軍に諷するところあるが如く、主人に諫むるものあるが如く――またいささか自ら絶望の気味あるかの如く、次のように言う、