Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 254.021 Zeichen · 495 Bildschirme
見ると、それが今の思出し男、恐山から来た柳田平治に相違ありませんから、白雲も思わず、たじたじとしたことです。何をどうしたのか、先刻あれほど肩で風を切って出かけて行った男が、なんとなく浮かぬ面で、すごすごとまたここまで舞い戻って来たということが、白雲をして面食わせることほど、意外千万な引合せであったからです。
十一
「どうしたのだね、君」
あまりのことに、田山白雲が身近く寄って来たところのこの男に向って、かく呼びかけざるを得ませんでした。
「忘れ物をしました」
「忘れ物、何を忘れたのです」
「手形を忘れました、旅行券を」
「なるほど――」
その手形というのは、さいぜん、現にここで、この男が懐中からさぐり出して役人に提示して見せたのを、現に田山白雲も見届けておりました。
あの際、紛失したのか、或いはここを出て暫く行く間に取落しでもしたものか、いずれにしても、粗忽千万の咎は免れない。隙のないようでも、若い者の手はどこか漏れるところがある。これから先、山河幾百里の関柵をあけて通る鍵だ。その唯一の旅行免状を取落して何になる。これではさすがの強情者も、浮かぬ面をして取って返さざるを得ない出来事だと、白雲も思いやりました。