Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
「茂ちゃん、もう少しお話しよ」
その時は、もう茂太郎の姿は、この座敷の中には見えず……といっても、七兵衛のように、忍術まがいの早業で、消えてなくなったわけではなく、窓から身をおどらして、室外へ飛び出してしまったのです。
ほどなく洲崎鼻の尽頭、東より西に走り来れる山骨が、海に没して巌角の突兀たるところ、枝ぶり面白く、海へ向ってのした松の大木の枝の上に、例の般若の面をかぶって腰うちかけ、足を海上にブラ下げた清澄の茂太郎。
北の方、目近に大武の岬をながめ、前面、三浦三崎と対し、内湾と、外湾との暮れゆく姿を等分にながめながら、有らん限りの声を出して歌いました。
万木おふくが通るげで
五百雪駄の音がする
チーカロンドン、ツァン
正木千石
那古九石
那古の山から鬼が出て
鰹の刺身で飲みたがる
チーカロンドン、ツァン
このところより、遠見の番所はさまで遠いところではない。
あの座敷にいた岡本兵部の娘の耳には、明らかにこの歌の音が聞き取れる。歌の音が聞えるばかりではない、ちょっと身をかがめさえすれば、いま出て行った窓のところから、明らかにこの竜燈の松と、その枝の上に身を置いて、海洋の上に高く足をブラ下げながら、対岸三浦三崎のあたりを眼通りにながめて、あらん限りの声をしぼってうたうその人の姿を、まるで手に取るように、ながめることができる