Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme

Aozora Bunko

お松は、自分の生涯が、もうこれで定まったとも感じません。これより後の前途は、平々淡々なりとも安んじてはいないが、少なくともこの道路に、これより以上の陥没はない、これよりは地を踏みしめて行くだけが、自分の仕事である――というような心強さは、ひしと感じています。

夜になると、お松は夜ふくるまで針仕事をしていることがあります。

道場の方で藁を打つ音。それと共に縷々として糸を引くような、文句は聞き取れないながら断続した音律。お松は針先を髪の毛でしめしながら、

「また、与八さんがお経をはじめた」

与八が東妙和尚からお経を教えられて、しきりにそれを誦しているのは、今に始まったことではありません。

それは何のお経だか、与八自身も知らないはずです。或る時、東妙和尚に尋ねてみたら、和尚のいうことには、

「お経はわからないで読んでこそ有難味がある、ただ、有難いという有難さをみんな集めたのが、このお経だと思って読みさえすればよい、お経がわかると、有難味がわからなくなる」

そう言われたから与八は、言われた通りに信じて、わからないなりに誦していることを、お松はよく知っています。