Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
それは歌の心が好きなのではなく、口当りがいいから、それで思わず繰返されるのかも知れない。そうでなければ、相聞の歌では、これがいちばん男性的であるというような意味で、良斎先生の愛誦となっているところから、その口うつしが、思わず知らず、お雪ちゃんの口癖になっているのかも知れない。
万葉の歌は上代の歌人の――上代の歌人とのみいわず、すべての人類の血と肉との叫びであります。人生に、恋にいて恋を歌うほど苦しいものはなく、恋を知らずして、恋歌をうたうほど無邪気なものはありますまい。
その時、湯槽の方で高らかに笑う男の声がする――まもなく、トントンとかなり足踏みを荒く三階の梯子を上る人の足音がする。もしやとお雪ちゃんは狼狽しました。ここへ誰か訪ねて来るのではないか知ら。あの遠慮のない北原さんでも押しかけて来るのか知ら……それではと、あわただしく縫取りを押片づけて心構えをしていましたが、足音はそれだけで止んで、ここへ渡って来る人もありません。
来るべき人が来ないと思うと、淋しさはまさるものです。ことに、あれほど荒っぽく三階の梯子段を踏み鳴らしながら、上ったのか、下りたのか、それっきり立消えがしてしまったのでは、徒らに人に気を持たせるばかりのものです。