Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
「錦風波」の吹き方は、日本海の荒海のように豪壮で、淡泊で、しかもその中に、切々たる哀情が豊かに籠っている。そうしてどこにか、落城の折の、法螺の音を聞くような、悲痛の思いが人の腸を断つ……山形の臥竜軒派では、これをこう吹いて……
それにつけても思い起す、父が尺八というものに対する、あこがれと、理解の程度の、尋常一様でなかったことを。
高橋空山師と計って、附近の虚空院鈴法寺の衰えたるをおこさんとして果さなかった。あの寺は関東の虚無僧寺の触頭、活惣派の本山。下総の一月寺、京都の明暗寺と相並んで、普化宗門の由緒ある寺。あれをあのままにしておくのは惜しいと、病床にある父が、幾たびその感慨を洩らしたか知れない。自分が孝子ならば、その高橋空山という父の師なる人を探し当てて、そうして父の遺志をついで、あの寺を再興するようなことにでもならば、追善供養として、これに越すものはなかろうに……
父はまたよく言った、人間の心霊を吹き得る楽器として、尺八ほどのものは無く、人間の心霊を吹き現わし得る楽器として、尺八ほどのものは無いと――父といえども、世界の楽器の総てを知りつくしたわけではなかろうが、以てそのあこがれの程度を想い知ることができる。