Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠10

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme

Aozora Bunko

「ああ、もう日が暮れちゃった」

足を潮に洗われて、はじめて自分の空想も消えるし、感興の歌も止まるし、日の暮れたことがわかりました。

夕陽の空には、旗のような鳥だの、垂天の翼のような雲だの、赤く、白く、紫に、菫に、橙に、金色に変ずる山の形だの、空の色だのというものが、見る眼をあやにしたり、心をおどらせたりするけれど、その夕陽が全く落ち尽して、一色の墨色が、天と、地と、水を、塗りつぶしにかかってみると、自分の空想も塗りつぶされて、現実のわれに返ったものと見えます。

そこで、この少年は、またも一散に砂浜の上を走りつづけました。

後生大事に、般若の面を小脇にかかえて放さぬことは、いつもに変ることなく、軽快に砂原を走って、あえて疲れ気も見えないことは、山神奇童とうたわれた名にもそむかないようです。

なお、こうして走ることは走るが、その目的がわからないのも、以前と同じことで、ともかくも、あの馴染の多い駒井の家を遠く離れてしまって、あえて帰りを恋しがろうともしないのが不思議です。

砂浜を走れるだけ走って、かなり走り疲れたと思う時分に踏みとどまり、ようよう暗くなってゆく海の波がしらの白いのを、ながめて、こう言いました、