Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
食物のことも、また、さのみ他で心配するほどのこともないのです。竜安石のように海につかっている巌角の傍へ寄って、身をかがめると、片手には例の通り、般若の面を、しっかりと抱いたままで、右の手を、竜安石の下の蛸壺になっているようなところへ突っ込むと、暫くして、極めて巧みに掴み出したのは、六寸ほどの蛸であります。
それを巌の角へ持って行って軽く当てると、すんなりと延びたのを、そのまま口へ持って行って、頭からガリガリとかじりました。
片腕には般若の面をかかえ、片手では生の蛸をかじりながら、今度は海をながめると、星がキラキラとかがやいています。
この子供は、地の美しさよりも、海の美しさよりも、天上の星を見ることの美感に酔うことを知っているものですから、蛸を食べながら、夕陽の美観に、失われた幻想を、空から仰いで取返しながら、下を見ないで歩いて行くもののようであります。
こうなってみると、もう南北の区別を知らない、東西の差別もわからない。星を見れば、それはおのずから、わかりそうなものだが、今は方角の観念のために星を見ているのではないから。
「あっ!」
と再び、驚愕の叫びを立てた時は、その足もとが一尺ほど、潮にひたされているのを発見しました。