Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
そのままで手をのばして、例の写真を取り上げて、やはりその仰向けに寝たままで、それを冷静にながめ入りました。
ここで、この際、こんな写真を見せられようとは思わなかったのでしょう。有ると知ったら、見ない方がよかったのでしょう。でも、不意に現われて、不意に見せられてしまった以上は仕方がない。
これぞ、かつて、自分の最愛の妻であった人の面影。
十八
神尾主膳は、今朝は日当りのよい窓の下で、しきりに入木道を試みていました。
これが、閑居のうちに、神尾主膳が善を為すの唯一のことかも知れません。
朝の気分のいい時を選んで、会心の法帖を摸するの快味を味わう瞬間だけは、神尾主膳にも本当な清純な興味に、我を忘るる殊勝な色が面にただよいます。
今も、専心にそれをやりながら、ふと筆を休めて、半ば開いて置いた窓から、庭の方を見ました。
竹林の風情も面白いと思いました。掘ぬきの井戸から引いた泉水の流れも、今日は特別に気持がよい流れだと思う。朝の光線も、空気も、庭の木々も、そこへ遊びに来る小鳥も、すべてが快い感じを与える朝だというように、主膳は珍しく暢やかな、ゆったりした気分になりました。