Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
自分の子供を、先から先からと失って行った文次郎は、その愛を米麦に向って注ぎました。
子を思う涙が、米や麦にしみて行きました。人を愛する心と、物を愛する心に変りはありません。子を育てるの愛を以て、米麦を育てるのですから、米麦もまた、その育てられる人に向って、親の恵みを以て報いないというわけにはゆきますまい。
農夫と作物とは、収穫する人と、収穫せらるる物との関係ではなくして、育ての親と、育てられる子との関係でありました。
ある年のこと、浮塵子が多く出て、米がみんな食われてしまうといって、農民たちが騒ぎ出し、石油を田にまいて、その絶滅を企てたけれども、文次郎だけは石油をまかなかったそうです。それだのに収穫の時になって見ると、石油をまいた多くの田より、まかなかった文次郎の田の収穫が遥かに勝っていたということです。
また、ある年のこと、米を作るのに追われて、麦を乾かさないで納屋へしまい込んでしまったが、文次郎の麦には虫が入らなかったが、同じように麦をしまい込んだ他の百姓は、みんな虫に食われてしまったということであります。
これはなんでもないことです。ただ作物を人として扱うのと、物として扱うだけの相違であります。