Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 285.635 Zeichen · 558 Bildschirme
「そうでしたね、こんなに逃げたって仕方がありませんわね、それがどこまで逃げられるものでしょう」
「わたしと一緒にお帰り下さいまし」
「まあ、ゆっくりしておいで、あの火事をごらん、まあ、なんて綺麗な火の色でしょう」
お銀様と、弁信は、もつれるように並んで歩きながら、広い竹藪の中の小径を通って笹の間から、チラチラと見える火の勢いがようやく盛んなのを前にして、やがて藪を出ると、そこは、だらだら下りの小高いところになっていました。
欅の大木を横にして、いま盛んに焼けつつある大火を見ると、お銀様が踏みとどまって、
「弁信さん、母屋が焼けていますよ」
弁信もまた、その小高いところに踏みとどまっている。小さな姿いっぱいに、火の色が照り返しています。
小づくりな、色の白い弁信の姿が、この時は紅玉のように赤く見えました。
「助かりませんか」
「もう、駄目でしょうよ」
「ああ、怖ろしい音がします」
「でも、大切なものは、みんな取り出してしまったでしょうから、安心です」
「あのお文庫倉へは火が移りませんでした? あの中には、私が聞いてさえ惜しいものがたくさんございます」
「あれは大丈夫、目塗が届いているから」