Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 368.567 Zeichen · 720 Bildschirme
「少しも見えません、また見えるはずもございませんもの」
「だから、わしの眼が今日はどうかしているのだろう、こっちの眼では、ありありとわかるものが、お前の眼に少しも見えないとは……だが確かに錫杖が一本、あの剣ヶ岳の上に立っている。錫杖が存する上は、それを立てた人間がなければなるまい。人間がそれを立てたとすれば、古来、人跡至らずといわれた伝説は嘘だ……」
しかしながら、これは物争いになりませんでした。一方が見えるというものを、一方が全く見えないというのですから、議論になりません。
「ああ、お月様が出ました、新月が……何という、いじらしい光でしょう。ですけれども、また触れば切れそうなあの鋭さと、冷たさ。わたしは、お月様のうちで、あの二日月がいちばん好きでございます」
お雪の眼は、山から月にうつりました。
なるほど、立山の連峰から、加賀の白山へつづくと覚しいところに、新月の影があります。
金色の、聖者の最期を彩る荘厳に沈んだ山と、空との境目が、その金色の荘厳を失って、橙の黄なるに変りました。
その間に繊々としてかかる新月の美しさ。そうして、微かなるその新月の光に向いた山の峰が、涙の露を糸に引いたようなカーヴをかけているいじらしさ。