Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 368.567 Zeichen · 720 Bildschirme
「誰だ」
とがめた時に、この一室が月光のような色に冴え返って、隔ての襖が紗のように透きとおりました。
その透きとおる襖をとおして彼方の室を見ると(この時は竜之助のみがそれを見るのです)そこに丸髷に小紋を着た女房が一人、正面を向いて頻りに着物をたたんでいます。
尺八を机の上に置いた竜之助は、
「誰だ、そこにいるのは」
重ねて言葉をかけてみますと、
「ホホホホホ」
と、淋しく、愛嬌のある笑みを見せて、こちらは少しも向かずに、以前の通りの形で、しきりに着物をたたみながら、
「たいそうむずかしい曲を、おやりなさいますね」
「なに」
「むずかしくてわかりません、もう少し砕けたのをお聞かせ下さいな」
「お前に聞かせるつもりで、吹いているのではない」
「それでも同じことなら、もう少しやさしいのを吹いて下さいませんか、そら、いつかのあのしおの山――あんなのを吹いてお聞かせ下さいましな」
「お前は誰だ、妙なことをいう女だな」
「ホホホ、お見忘れでございますか」
この時はじめてこちらを向いた女は、お浜でありました。
「お前か」
竜之助は憮然として、うなだれてしまいました。
「あなたという人は、いつでも暢気ですねえ」