Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 368.567 Zeichen · 720 Bildschirme
一時、びっくりした茂太郎が、見るとそれはホルスタイン種と覚しい仔牛が一頭、なれなれしくやって来て、その首を茂太郎にこすりつけているのでありました。
「やあ、牛――お前、いつのまに来ていたの」
茂太郎は一時びっくりしてみただけで、その後はあえて驚きません。尋常ならば、たとえ牛であっても、こんな際に、房総第一の高山の上で、人っ子ひとりいないと信じていたところへ、不意にのっそりと現われて、体をこすりつけられるようなことをされては、大抵の子供は驚愕のあまり、悲鳴を上げて逃げ出すのがあたりまえですけれども、茂太郎は驚きません。
こすりつける牛の首筋を、可愛がって撫でてやりました。
そうすると、今までは多少遠慮の気味でこすりつけていた牛が、もう公けに許された気になって、全身をあげて、茂太郎にこすりついて来たその懐っこさといったらありません。
物と物との間には、どうしても、身も魂も入れ上げて好きになれるものもあれば、虫唾の走るほど嫌われながら、それでもついて廻らねばならぬ運命もある。
清澄の茂太郎が、物に好かれる性質を、先天的に、極めて多量に持ち合わせて生れたことは申すまでもありません。