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Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme

Aozora Bunko

これは、他人ならば米友自身の面目問題なのだが、この人では仕方がない――と米友は観念しているらしい。弥勒寺長屋で一つ釜の飯を食っている時にさえ、出し抜かれたのだから、今宵この場合は、型に心を取られていたおいらだ――油断といえば油断だが、寝首を掻かれたわけではなし、特にこの人は例外である。

米友も、そういう頭が出来ているから、深くはそのことを気に病まないでいたが、解し難いのは、その面を撫で廻す指先に光る剃刀と、それから、なおよく見ると、その座右に置いてある櫛箱です。それもこれも――この男がわざわざ持って来るはずはないと咎めるまでもなく、常日頃、米友がよく見慣れているお雪ちゃんの持物なのであります。

いつのまにこの人は、これを持ち出したろう。閃々として波間をくぐる魚鱗のように、町々辻々の要所要所をくぐり抜けて血を吸って帰るこの人の癖は、米友に於てもよく心得たものだが――いかに潜入が得意の人とはいえ、はじめての室内へ入って来て、櫛箱と、剃刀と、それから、なおよく見給え、ちゃんと下剃を濡らすためのお湯まで汲みそろえてある。こういう細かい芸当までが、できるということは、あり得べからざることだ。