Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme
平々淡々として、泣きもしなければ、怖れもしないのです。もがきもしなければ、焦りもしない。悲鳴も上げなければ、絶叫もしてはいないのです。鷲の爪で胴中の全部をしっかりと掴まれてはいるけれど、その爪が肉身の間に喰い入っているのではないのでしょう、苦痛の表情が更にないのみならず、血も流れてはいないのです。でも死んでいるのでないことは、その表情がそれを示します。寂静ではあるけれども、弁信の面の上には、苦痛のあとと悶絶の色は現われてはいないのです。弁信さんという人は、普通の人が苦痛の極とする時には、かえって安静の色が現われるし、多くの人が絶望の刹那という時に、かえって大安心の愉悦相を現わして来る人だ――だから、この場合、ああして澄まし切った面を見ていると、あれで全く無事なんだという弁信の心境が、お雪ちゃんの心の鏡にはっきり映るのです。せめてそれだけが、お雪ちゃんの心の慰めでありましたが、そうかといって、あのままで置けるものではありません――米友はしきりに歯がみをして、地団駄を踏んでいる。
「奴! やりゃあがったな」
「友さん、どうかならないものですか」
「うむ、見てやがれ!」