Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 268.946 Zeichen · 520 Bildschirme

Aozora Bunko

「今、わたしが明りをつけて、よく見えるようにして上げます」

と言って、お銀様は、いつのまに用意したのか、懐中から小田原提灯を取り出すと、早くも火がうつっていました。

もとより小田原提灯の火ですから、この広大陰暗な洞窟の全部が照し出されようはずはありません。それでも、注連を張った岩窟の中までは朧ろに光が届いて、その奥の方に、かすかに白い衣服がうごいていることがわかる。それはたしかに人間には相違ないが、まだ、そのえたいはわからないのです。男だか女だか、それはもとよりわからないが、幽明いずれの人だか分明ではないが、その中から起る短笛――つまり尺八です――の音だけは明々喨々として、お雪ちゃんの耳まで響き来るのであります。

「ああ、鈴慕――」

やっぱり鈴慕でした。

「お嬢様、この中で鈴慕の声が聞えます、早くこの中へ入ってみましょうよ」

「危ない!」

と、お銀様が遮るのを、お雪ちゃんはかえってせき込んで、

「お嬢様、もう少し、あの提灯の火を明るくしていただけませんでしょうか、笛の音だけはハッキリと聞えますけれど、中においでになるお人がどなたかわかりません」

「もう、これより明るくはなりません」