Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠19 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 319.771 Zeichen · 617 Bildschirme
それが近ごろは、だんだん嵩じて来た。お絹が水性であることは万々承知で出してやりながら、あとに残された時に、神尾の胸が怪しく騒ぎ出して来るのです。
なあに、親爺の寵者で、うちの召使なんだ、おれのいろではあるまいし、おれもまずほかに女がいないではあるまいし、あいつに惚れてもなんでもいるんではないが、いなくなると心がいらいらする、焦れて焦れてたまらない、しまいには血の気が頭に上って、「浮気者にも程がある、明朝帰って来たらただは置かぬぞ」という、物すごい気分にまで上ずって来ることもあるが、さて、朝になって帰って来て、「ねえ、あなた」なんぞとやられると、神尾の頭へ上った血が不思議にグッと下ってしまう。骨までぐんにゃりとされるような重しがのしかかって、神尾は自分ながら、その甘ったるさ加減に腹が立つ。帰ったらブチのめしてもくれよう、次第によっては、親爺になり代って刀の錆にまでと意気ごんだものが、だらしない格好で、すましこんで、「ねえ、あなた――」とやられると、自分はどうにもはや、昔の「お坊ちゃま」にされてしまう。硬くて歯が立たないならいいが、搗きたての餅のように軟らか過ぎて歯が立たない。