Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠19 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 319.771 Zeichen · 617 Bildschirme
「おや――」
と思っているうちに、隔ての襖がサラリとあいて、次の間に手をつかえているのは案内の婆やと、その後ろの暗がりに白く浮いて見えるのは、たしかに若い男女の者の二人。
おやおや、たのみ甲斐もない、うまく扱って帰してしまってくれるとばっかり思っていたのに、その頼みきった婆やが、こちらの一応の内意も聞くことをせずに、先に立って引きつれて来てしまったのでは話にならないではないか。
だが、つれて来てしまったものは仕方がない、女だてらに声を荒らげて叱り帰すわけにもゆくまいではないか、お銀様も呆れて襖の向うを見渡していると、白く浮いた二人の男女のうちの一人が、
「お初にお目にかかりまする、わたくしが真三郎でござります」
「わたくしは豊と申しまする」
許されない先に入り来った男女の者は、問われない先に、自分の名を名乗ってしまいました。
十四
「こちらへお入りなさい」
名乗りまでしかけて来られてみると、お銀様もぜひなく、こちらへ招じ入れないわけにはゆきません。招ぜられて二人は、辞することなく、するすると座敷へ通って程よく並んだと見ると、もう案内の婆やの姿は掻き消されてしまって、行燈の下に、しょんぼりと坐っている男女の姿のみを見るのであります。