Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 242.044 Zeichen · 477 Bildschirme
果して、暗の落つると共に、路を失ったこの旅のさむらいは、左に行くべきを右にいって、甲斐と武蔵の国境を、北へと辿っているのであります。こうなると、もいっそう暗くなるのを待って、どこかに火影を認めて進む方が賢いかも知れない。程経て、陣馬と和田との間の高いところへ立ったさむらいは、そこで今まで脱ぐことをしなかった覆面を解いて、夜の高原の空気に面を曝すと、西の空に二日月がかかっているのを見るばかりで、前後も、左右も、みな山であります。
ホッと息をついて汗ばんだ面を拭うと、べっとりと濡れた髪の毛――その髪の毛は、女にも見ま欲しいたっぷりしたのを、グルグルと櫛巻にして、後ろへ束ねていました。
西の空にかがやく二日月。暫く放心してその月影をながめているうちに、何に打たれてか身ぶるいしました。その時の、この人の形相は、絵に見る般若の面影にそのままであります。この人は月をながめているのではない、月を恨んでいるのです。
この高処に立って、下りて行くべき何かの暗示を求めて得ざるが故に、二日の月に空しく恨みを寄せている。
「わたしは知らない」
その恨みは女の声。その女はまさしくお銀様であります。