Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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だいぼさつとうげ

大菩薩峠7

中里 介山

Lesen Sie 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 242.044 Zeichen · 477 Bildschirme

Aozora Bunko

急に、晴々した美しい面になると、真紅な縮緬の前掛が燃え出したようにうつり合いました。

「伊勢から来たというわけでもないが、伊勢には暫くいたことがあるのだ」

「それでは間の山をごらんになりましたか」

「間の山は見ないけれど、間の山節というのを聞いたことがある。そういうお前こそ伊勢の国のうまれか」

「わたくしは伊勢のうまれではございません、どこといってうまれた国は……まあ、渡りものなんでございますね」

「渡りもの?」

「ええ、お恥かしい話ですが、男に欺されて諸国をひきまわされたあげく、今ではこうして信州の諏訪へ来て物売りを致しておりますようなわけでございます。女というものは、水性なものでございますから、男次第でどうにでもなります。ほんとうに意気地のないものでございますね、オホホホホ」

この時の女の言葉には、触れば落ちるような甘味をふくんでいたので、竜之助は暫く沈黙しました。

「ねえ、旦那様、おついでにお面の方も、もう一ぺんあたって上げましょうか。殿方のおあたりになったよりも、これでも女の方が、手ざわりがいくらかやわらかになるかも知れません。御免下さいまし」

そのやわらかな手を、首筋から頬のあたりへうつした時に、竜之助の面がひときわ蒼白くなりました。