Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 242.044 Zeichen · 477 Bildschirme
十七
宇治山田の米友は、このごろ深刻に苦しんでいます。
死というものに初めて直面した苦しみを、まともに受けて、八百長なしに取組んでいるのですから、その苦しみは惨憺たるものであると共に、名状すべからざる奇観です。
米友といえども、死というもののこの世(或いはあの世との境)に存在することを、いま初めて知ったわけではありません。今更、足もとから鳥の飛び立ったように、「死」というものに驚きさわぐのは、滑稽なようですけれども、「死」の存在を知って、その来る瞬間までそれを怖るることの少ないのは、多くの人間の常であります。
「今までは人のことだと思いしに、おれが死ぬとはこいつたまらぬ」――死の来る目前まで、舞踏歓楽し、死の直面に来って、はじめて恐怖狼狽する人間の通有性を、米友もまた御多分に漏れず持ち合わせていればこそ、こいつたまらぬと噪ぎ出したのか知ら――いや、当人はピンピンしている。まだたたき殺しても死にそうもない体格に、ゆるみは来ていない。事実、この男は一度も二度もたたき殺されているのだが、容易に死なない。今もまだその通りで、おれが死ぬとは思っていないが、死というものが、見るもめざましく眼前に押寄せて、自分を窒息させようとしているのに、それにまともにぶつかって、周章狼狽しているのです。