Japanische Klassiker mit Furigana
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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
Lesen Sie 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) von 中里 介山 (なかざとかいざん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 242.044 Zeichen · 477 Bildschirme
十五
宇津木兵馬は、七兵衛の約束を半信半疑のうちに、浅草の観音に参詣して見ると、堂内の巽に当る柱で噪いでいる一かたまりの人の声。
「ははあ、あれが安達ヶ原の鬼婆だ、よく見ておけよ、孫八」
一勇斎国芳の描いた額面を見上げている。今に始まったことではない。「安政二年乙卯仲春、為岡本楼主人之嘱、一勇斎国芳写」と銘を打った一ツ家の額面。それを巽の柱の下に群がった一かたまりが熱心にうちながめて、
「あの鬼婆の憎い面を見ろ、あの出刃庖丁で女の腹を割いて、孕児を食い物にするところだあ、孫八」
「憎い婆!」
褐色の着物に黒い帯をして、尻端折りをし、出刃をかざした形相ものすごい老婆の姿に、憎しみの眼を投げると共に、その腰にすがっている振袖を着た可憐な乙女に、痛々しい同情の眼を向けない者はない。
「あの、眼をつぶっているお稚児さんは、ありゃ何だろう」
といったが、急にそれに返答を与えるものがありません。
つまり、女の腹を割いて、その孕児を見るという安達ヶ原の鬼婆は、今その携えた出刃庖丁で、あの可憐な振袖を着た乙女を、犠牲の俎板に載せようとしている瞬間と見ていると、自然その左手に気高くほおづえついて眠っている稚児髷の美少年が、よけいな物になって、説明に行詰まってしまいます。