Japanische Klassiker mit Furigana
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てんぽうのひこうじゅつ
天保の飛行術
野村 胡堂
Lesen Sie 天保の飛行術 (てんぽうのひこうじゅつ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.024 Zeichen · 28 Bildschirme
「あなたは一体どこへおいでなさる積り?」
お通は続けました。
「白山様を拝んでから、飛騨の高山の方へ降りる道は無いでしょうか」
清作は顔を挙げました。陽炎の中に坐っているような、不思議な亢奮と面はゆさを覚えさせる女です。
「危い山も御存知で?」
「まさか、大槻伝蔵の悪霊が出るとは思いませんよ」
「いえ、そんなエテ物じゃなく、二本差しの光る眼ですよ、――これさえあれば怖くはないけれど」
「――――」
お通は懐中から先刻の山手形を出して見せびらかすのです。
「先刻は飛んだお役に立ちましたわねエ、――加州御重役の判が捺してある山手形、――年中山の中を歩いて役人方に顔を見知られている私には用の無い品だけれど、――欲しいでしょう、あなたは?」
男の腹の中を見透したような眼が挑むのでした。
「――――」
清作はなんと応えたものか、唯笑ってそれを見やるばかりです。
「欲しければ差し上げましょうよ、御前平まで上って、お望みのものをよく見届けていらっしゃい」
「えッ」
清作はギョッとしました。
「此頃は一から十まで気に入らない加州の仕打ち、――この私だって、どんなことになるか解らない――私にまで用心することは要りませんよ」