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Japanische Klassiker mit Furigana

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てんぽうのひこうじゅつ

天保の飛行術

野村 胡堂

Lesen Sie 天保の飛行術 (てんぽうのひこうじゅつ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.024 Zeichen · 28 Bildschirme

Aozora Bunko

奥村主殿は、退引きさせず申付けます。

それから二人の飛行具組立てが始まりました。隣合わせた作業場に、お互いに立て籠ったまま。幸吉はたった一人、娘お通の安否ばかり気にし乍らコツコツと仕事を励むのに対して、鶴次郎は四人の若党を助手に、歌ったり騒いだりの賑やかな仕事振りです。

ある夜、幸吉の夢に、血みどろのお通が現れました。「父さん、父さん」と揺り起されてハッと気が付くと、窓の隙間から、枕元に何やら投げ込んだものがあります。

「?」

起き上って月光りに透して見ると、斑々たる一通の血染の手紙、押し開くと中は紛れもないお通の手で、加州御重役の悪辣さから、自分の命の危いこと、父の命までも狙われていることを、細々と書いてあるのです。

読み終ると、中に巻き込んだもう一通、それは懐ろ紙に矢立の筆を走らせた男文字で、見る見る幸吉の顔色は変りました。ハラハラと老の頬に流るる涙――。

翌る朝から、幸吉の態度は別人のように変りました、痩せ枯れた五体に、鋼鉄のような冷い筋金が入って、唯黙々と製作を急ぐのです。やがて、日限の七日目には、小屋の中一パイに雄姿を横たえたのは、巨大の蝙蝠のような飛行具の雄姿、三十年来、幾度、十幾度、毀しては作り、作っては毀した経験の大蓄積が、此処に初めて、大自信を托する飛行具となったのです。