Japanische Klassiker mit Furigana
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てんぽうのひこうじゅつ
天保の飛行術
野村 胡堂
Lesen Sie 天保の飛行術 (てんぽうのひこうじゅつ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.024 Zeichen · 28 Bildschirme
「あ、お通か」
山役人達は妙にテレ臭い顔を見合わせました、この女には毎々手を焼いて居る様子です。
「お通か――はないでしょう、みんなひと通り、私へ小当りに当った覚えがある癖に、フ、フ」
「この人は、私の仲間よ、――家来と言っても宜いワ、清作と言って、取って三十二、江戸の生れだけれど、人間はそりゃ半間よ、可愛がってやって下さるわねエ」
お通はそう言って、輝やくばかりの半面に、美しい微笑を咲かせるのでした。
「そりゃ、本当か、お通」
「本当も嘘もありゃしない、――今度は仕事が大きいから手伝いの人を捜しに私は金沢の城下まで行ったじゃありませんか、此処に関所なんか拵えて、大事の人を喰い止められちゃ、御用の役に立たないことになりますよ、ね、そうじゃありません?」
お通はなんのこだわりもありません。
旅人清作はその半面の表情を魅入られるように見て居りました。埃及の壁画のように、二人袴の所作のように、半面しか人に見せない姿勢のうちに、この女の神秘的な美しさは、底の知れない魅力を醸し出すのでしょう。
「その証拠があるだろうな」
山役人は大事をとりました。
「証拠の無いことを言うものですか、此の通り、山手形を御重役方から頂いて来たのに、うっかり私が、この人に渡すのを忘れたのですよ、それ、ね」