Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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てんぐいわのさつじんま

天狗岩の殺人魔

山本 周五郎

Lesen Sie 天狗岩の殺人魔 (てんぐいわのさつじんま) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.872 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

直ぐポケットへ押込んで歩を進めた。

栗林の中に唯一本、ぬきんでて巨きい松がある。村人は「印の松」と云って、沖へ出た漁夫が、帰る時の眼印にするくらいで、高さ四十メートルもある巨木だ。――その根方に、五十歳くらいになる農夫態の老人が、血まみれになって倒れていた。

「うむ! 矢張り……」

と平野氏は見るなり其場へ立竦んだが、祐吉はさすが医学生だけに、直ぐ走寄って抱起した。すると男は、息も絶え絶えに、

「も、もう削れねえだ、もう、些っと、押しても、それで……ああ、危ねえ――」

「おい、確りしろ、誰がやったんだ」

「…………」

「おい! 君※(感嘆符二つ、1-8-75)」

耳許へ口を押付けて叫んだが、老人は奇怪な言葉を最後に、絶命して了った。――祐吉は老人の脈を診たり、瞳孔を検べたりしていたが、

「駄目です、死にました」

と云って立上った。

「頸のところを突刺されたんです。もう少し早く手当をすれば、或は助かったかも知れませんが、斯う出血がひどくては……」

「村の者らしいな」

「そうでしょう」

祐吉は尚も四辺を注意深く見廻してから、さっき拾った手帖を取出してペラペラとめくって見た。