Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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てんいむほう

天衣無縫

織田 作之助

Lesen Sie 天衣無縫 (てんいむほう) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.975 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

ないか、とそんなことを考えていると、ちっとも笑えなかった。寄席を出るともう大ぶ更かったから、家まで送ってもらったが、駅から家まで八丁の、暗いさびしい道を肩を並べて歩きながら、私は強情にひとことも口を利かなかった。じつは恥かしいことだが、おなかが空いて、ペコペコだったのだ。あの人は私に夕飯をご馳走するのを忘れていたのだ。なんて気の利かない、間抜けた人だろうと、一晩中眉をひそめていた。

しかし、その次会うた時はさすがにこの前の手抜かりに気がついたのか、まず夕飯に誘って下すった。あらかじめ考えて置いたのだろう、迷わずにすっと連れて行って下すったのは、冬の夜に適わしい道頓堀のかき舟で、酢がきやお雑炊や、フライまでいただいた。ときどき波が来て私たちの坐っている床がちょっと揺れたり、川に映っている対岸の灯が湯気曇りした硝子障子越しにながめられたり、ほんとうに許嫁どうしが会うているというほのぼのした気持を味わうのにそう苦心は要らなかったほど、思いがけなく心愉しかったが、いざお勘定という時になって、そんな気持はいっぺんに萎えてしまった。仲居さんが差し出したお勘定書を見た途端、あの人は失敗たと叫んで、白い歯の間からぺろりと舌をだした。