Japanische Klassiker mit Furigana
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「ダブックウ」ひょうりゅうき
「太平洋漏水孔」漂流記
小栗 虫太郎
Lesen Sie 「太平洋漏水孔」漂流記 (「ダブックウ」ひょうりゅうき) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.264 Zeichen · 37 Bildschirme
あれが、凪がちかい証拠だというんです。じきに、北の星が見えるかもしれませんわ」
それまでキューネは、ただ羅針盤だけでこの舟を進めていた。いま針路は真東にゆき、エリス諸島辺へむかっている。それだのに、赤道ちかいとは何事であろう。事によったら、皇后アフガスタ川の叢林中につないで置いたあいだ、なにか羅針盤が狂うような原因があったのではないか。そこで、念のため軽便天測具を持ちだして、その夜、星を測ってみたのだ。なるほど、セントウルスの二つの輝星の位置がちがう。
かれは、軽便天測具を置くとナエーアの手をにぎった。はじめて土人娘のカンの正しさを知ったのだ。
「私たちが、もしこの舟のうえに一生いるようになったら……」
ナエーアがある夜キューネにこんなことを云いだした。星影をちりばめたまっ暗な水、頭上の三角帆は、はち切れんばかりに風をはらんでいる。
「そうだねえ。僕らは、こんなようじゃ当分海上にいるだろうからね」
事実この三人は、見る島、ゆく島の人たちによって残酷に追われていた。キューネのだれにも分るドイツ訛りと、戦争が終ったか終ったかと聴くような怪しい男には、どの島民も胡乱の眼をむけずにはいない。